2018 年 25 巻 4 号 p. 238-243
【目的】慢性疼痛に対しトラマドール含有製剤(以下,トラマドール)が広範に使用されるようになった.そこで日常診療においてトラマドールを長期投与した症例について投与量,効果,副作用などの推移を調査することとした.【方法】当院の診療録を後方視野的に検索し,トラマドールを3年以上長期に投与した症例の投与量,痛みの程度,副作用などについて集計することとした.【結果】トラマドールは2,656例に投与され,そのうち,3年以上継続投与された症例が50例あった.平均年齢は約61歳,痛みの内訳は運動器疾患(腰背部痛)24例,運動器疾患(頸部上肢痛)14例,運動器疾患(下肢痛)7例,帯状疱疹後神経痛4例などであった.痛みの程度については,開始時の視覚アナログスケール(VAS)が平均70.7 mmであったが,投与後3カ月以降はおおむね40 mm以下に推移し,投与後約3年時には平均33.6 mmまでに改善した.おもな副作用はめまい・傾眠・倦怠感,悪心・嘔吐,便秘で,投与期間別に発現頻度をみると,開始後3カ月までの発現率が高かった.【結論】トラマドールを3年間以上継続投与した症例では重大な副作用はなく,トラマドールは患者の観察を行いながら注意深く使用すれば長期に使用できることが確認された.