2018 年 25 巻 4 号 p. 244-250
慢性痛患者は,夜間痛による不眠と鎮痛薬の副作用から生じる日中の眠気が問題となる.当科通院中の慢性痛患者100例を対象とし,日中の眠気についてアンケートでの実態調査を行った.日中の眠気は視覚アナログスケール(visual analogue scale:VAS)(眠気VAS)で評価し,眠気VAS 50を境として患者を2群に分けて比較し,眠気のリスク因子について検討した.眠気VAS<50(A群)38例,眠気VAS≧50(B群)62例となり,眠気VAS≧50の患者が6割以上であった.また両群を共変量としたロジスティック回帰分析により帯状疱疹後神経痛・抗うつ薬使用が眠気VAS≧50のリスク因子と判明した.Epworth眠気尺度の点数はB群で高かったが,慢性痛と睡眠時無呼吸症候群との関連性は明らかにならなかった.アテネ不眠尺度に群間差はなかったが,両群とも中央値は6点以上であり,夜間の睡眠障害が疑われた.慢性痛患者は不眠傾向にあり,帯状疱疹後神経痛・抗うつ薬使用は日中の強い眠気を引き起こす可能性が示唆された.