【症例】46歳女性,身長157 cm,体重58 kg.20歳ごろより両股関節痛を生じ,変形性関節症と診断され保存的に加療していた.当院整形外科紹介受診し,左人工股関節置換術施行予定となった.腰神経叢ブロックと傍仙骨部の坐骨神経ブロックを施行後,全身麻酔導入し,手術を行った.術後のレントゲンで脚延長は20 mmであった.覚醒後,両下肢に運動障害と感覚障害があった.症状は数時間以内に改善し,腰神経叢ブロックが硬膜外ブロックになったと考えられ,画像検査で血種による神経圧迫などを除外した上で経過観察となった.その後,感覚障害と運動障害は改善傾向であったが左足関節の背屈運動のみ回復が遅れ,術28日後の筋電図検査にて腓骨頭レベルでの軽度腓骨神経障害と診断された.術32日後,杖歩行安定し退院した.【まとめ】本症例の神経症状は,腓骨頭レベルでの神経障害であることから,腓骨神経の過伸展等の物理的因子に起因することが推察されるが,腰神経叢ブロックが硬膜外ブロックになったことにより麻痺症状が初期段階ではマスクされた.また今回の神経ブロックが麻痺に影響した可能性も否定できない.