日本ペインクリニック学会誌
Online ISSN : 1884-1791
Print ISSN : 1340-4903
ISSN-L : 1340-4903
症例
治療抵抗性の重度Bell麻痺に鍼灸治療を行い麻痺の改善が見られた1症例
玉井 秀明堀田 訓久瀧澤 裕後藤 卓子丹羽 康則平 幸輝
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2023 年 30 巻 1 号 p. 1-4

詳細
抄録

Bell麻痺の多くは予後良好であるが,治療に難渋する患者をしばしば経験する.今回,発症後2カ月間の治療で全く改善の見られなかった重度Bell麻痺の患者に対して鍼灸治療を行い,麻痺の改善を認めた症例を経験したので報告する.症例は67歳の女性.Bell麻痺の発症当日からステロイドが投与されたが,発症1カ月後の麻痺スコアは,柳原40点法で0点と重度であった.麻酔科を受診し,星状神経節ブロック(SGB)およびsilver spike point(SSP)療法を9回施行したが,麻痺の改善が全く見られなかったため,発症2カ月後から鍼治療および自宅での自己施灸を開始した.鍼治療は1~3週間に1回の頻度で実施し,自宅施灸はほぼ毎日行った.その後,麻痺は徐々に改善し,発症7カ月後の麻痺スコアは22点となった.薬物療法や神経ブロックで治療効果が得られなかったBell麻痺に対して,鍼灸で改善した症例を経験した.鍼灸治療は合併症リスクが低く,慢性の病態に対して長期間継続可能であり,自己施灸も利便性が高いことから,ペインクリニック診療で難渋するBell麻痺に対して考慮すべき治療法の一つと考えられた.

著者関連情報
© 2023 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
次の記事
feedback
Top