2025 年 32 巻 4 号 p. 80-84
思春期の四肢の痛みは,原因不明の成長痛と診断されることも多い.類骨骨腫は原発性良性骨腫瘍の10%を占める疾患で,ペインクリニックで遭遇することはまれである.17歳の女性が夜間覚醒を伴う左肘の痛みでペインクリニックを受診した.痛みは半年ほど前から徐々に増強し,近医でX線写真を撮影されたが原因不明であった.受診時にはnumerical rating scale(NRS)で9/10の安静時痛があり,肘関節の熱感と腫脹,軽度の伸展障害を認めた.痛みはロキソプロフェン内服でNRS 3/10まで軽減するが,6時間程度で再燃した.整形外科と連携し画像検査をしたところ,CTで上腕骨肘頭窩に石灰化を伴う約3 mmの骨透亮像が指摘され類骨骨腫が疑われた.類骨骨腫は整形外科により関節鏡下に掻爬され,痛みは消失した.類骨骨腫は若年に多く,典型的な症状は夜間増悪を伴い非ステロイド性抗炎症薬が著効する痛みである.診断は画像検査でなされるが,特に関節内類骨骨腫は診断が遅れることも多い.類骨骨腫はまれだが,思春期の痛みの重要な鑑別診断である.