抄録
胸腔鏡下肺癌手術を受けた98名の患者を対象に,ロピバカイン(1.5 mg/ml)とフェンタニル(2 μg/ml)を用いた患者自己調節硬膜外鎮痛(PCEA)とモルヒネ(1 mg/ml)を用いた静脈内患者自己調節鎮痛(IVPCA)の術後鎮痛効果と副作用について後ろ向きに検討した.安静時においては,痛みに関する視覚アナログスケール(VAS)が30 mm未満の症例が大部分を占めていたが,体動時においては,手術当日のVASがPCEA群で48.5 mm,IVPCA群で60.3 mmと,体動時痛が認められた.副作用は,嘔気・嘔吐が最も多く,PCEA群18%,IVPCA群25%で差がなかったが,鎮静度(sedation score)はIVPCA群で有意に高かった.今回,肺癌VATS術後の体動時痛に対し,十分な鎮痛効果が提供されていなかった可能性があることが示された.