日本ペインクリニック学会誌
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硬膜外脊髄刺激装置の永久埋込み決定に対する自己評価式抑うつ尺度の影響
大松 裕明齊藤 理安部 洋一郎大瀬戸 清茂
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2006 年 13 巻 4 号 p. 409-413

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抄録

硬膜外脊髄刺激療法 (ESCS) の治療効果は, 疼痛の心因要素の程度に関係するといわれているが, その心因要素の評価に自己評価式抑うつ尺度 (SDS) を用いた報告はない. 目的: 術前SDSスコアがESCSの試験刺激後に永久埋込み術を施行したか否かに関係するかを検討する. 方法: 2004年8月から2005年12月の期間に当院でESCSの試験刺激を行った25症例を対象として, 診療録に基づき後ろ向きに調査した. 試験刺激後, 永久埋込み術に至った Success 群 (S群) と, 試験刺激のみで永久埋込み術を希望しなかった Failure 群 (F群) とに分け, 年齢・性別・疼痛罹患期間・疼痛部位・原疾患・術前 face scale (FS)・術前使用鎮痛薬・術前SDSスコアの項目を比較検討した. 結果: S群5例, F群20例であった, 男女比はS群2:3, F群12:8であった. 年齢はS群F群各66.2±4.7歳, 59.1±14.9歳で, 疼痛罹患期間は各7.8±4.4カ月, 4.4±3.7カ月, 術前FSは2.6±0.9, 3.1±0.8であり, すべて両群で有意差を認めなかった. 疼痛部位・原疾患・術前使用鎮痛薬でも両群に有意差はなかった, SDSスコアはS群31.4±3.1, F群44.0±11.5 (p=0.0003) でF群の方が有意に高かった. 結論: ESCSの試験刺激の結果, 永久埋込み術を施行しなかった患者は, 埋込み術を施行した患者と比較して術前SDSスコアが高かった. SDSスコアが高値である症例はESCS永久埋込み術に至らない可能性が示唆された.

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