日本ペインクリニック学会誌
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末梢性求心路遮断性疼痛に対する鏡療法の有用性(第2報)
腕神経叢引き抜き損傷後疼痛2例
住谷 昌彦上林 卓彦林 行雄井上 隆弥阪上 学松田 陽一金村 誠哲柴田 政彦眞下 節
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2006 年 13 巻 4 号 p. 423-426

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抄録

腕神経叢引き抜き損傷 [brachial plexus injury (BPI)] 患者は麻痺肢に強い痛みをしばしば訴え難治である. 幻肢痛の治療として報告された mirror visual feedback therapy (以下, 鏡療法) は, 難治性疼痛全般に対する臨床応用の可能性が示されていることから, 幻肢を伴わないが麻痺肢に痛みをもつBPI患者2例 (有効1例, 無効1例) に対して鏡療法を行った. 有効例: 麻痺肢第1指と手背を押しつぶされるような間歇的な痛みがあったが, 鏡療法施行直後から麻痺肢第1指の運動をイメージすると疼痛が緩和した. 鏡がなくとも麻痺肢の運動がイメージできるようになり疼痛は緩和した. 無効例: 麻痺肢に発作性の電撃痛があった. 鏡療法を約8週間継続したが, 麻痺肢の運動がイメージできず疼痛もほぼ不変であった, 運動感覚の出現の有無が疼痛緩和と密接に関係していることから, 鏡療法は視覚を介して身体および運動感覚のイメージを作り上げることによって, 脳内の体性感覚中枢と運動中枢のネットワークの再統合を図る方法であると考えられる. さらなる検討が必要ではあるが, 難治性疼痛に対する治療手段の一つとなりうると考えられる.

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