2007 年 14 巻 4 号 p. 406-409
下肢切断術後に幻肢痛を生じた3例にエルカトニンを点滴静注し, 幻肢痛が軽減したので報告する. 症例1は36歳, 男性. 轢断外傷で右下肢の膝下切断術を受けた. 断端の痛みと失った右踵のしびれるような痛みに対し, エルカトニンの点滴静注を行つた. 1日1回100IU, 3日間を1クールとし, 計4クール終了後, 幻肢の踵の痛みは消失した. 症例2は41歳, 男性. 糖尿病性壊疽で右下肢の膝下切断術を受けた, 術後6日目から右下肢の指先の幻肢痛が出現した. エルカトニンの点滴静注1クール終了後, 疼痛は numerical rating scale (NRS) で10から4へと低下した. 症例3は57歳, 男性. 下肢動脈血栓閉塞症で左下肢の膝下そして膝上での計2回の切断術を受けた. 下腿からつま先にかけての痛みとしびれが起こり, 疼痛はNRSで10であった. エルカトニンの点滴静注を開始したが, 疼痛の軽減に時間を要した. 計10クールのエルカトニンの点滴静注を行い, 疼痛はNRSで5となり, 治療を終了した. エルカトニンは幻肢痛に対する有効な薬物のひとつと考えられた.