日本ペインクリニック学会誌
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智歯抜歯後に発症したCRPSの2症例
高橋 完北川 裕利石井 努岩下 成人今宿 康彦
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2002 年 9 巻 1 号 p. 16-19

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抄録
知覚異常を主症状とした抜歯後CRPSの2症例を経験した.〔症例1〕50歳, 男性. 左下顎智歯抜歯後より左口唇周囲のしびれ感を自覚し, 徐々に増強するため当科を受診. 星状神経節ブロック, 抗てんかん薬, 抗うつ薬の内服等を行ったが無効であった. その後, 直線偏光近赤外線を局所および星状神経節近傍に頻回に照射したところ, 時々しびれ感を忘れる程度に軽快した. しかし症状は再燃し, 不安や焦燥が強くなったため心療内科を紹介し, 現在も治療を続けている.〔症例2〕67歳, 女性. 左上顎智歯抜歯後に口腔内の違和感や味覚異常が出現した. 抗うつ薬内服, 直線偏光近赤外線照射を行い症状は軽快した. しかし, 約6ヵ月を経て左口唇から眼窩部にかけての疼痛が出現, 再び当科を受診した. ケタミンテストを施行したところ強陽性であった. その後週に1回ケタミン少量点滴を外来で行い, 計5回で治療を終了できた. 抜歯後CRPSは医原性疾患であるため, 患者が侵襲的治療を拒否する傾向にあり治療に難渋することが多い. その場合, 外来で施行可能なケタミン少量点滴療法や近赤外線照射などの非侵襲的治療や心理学的療法を組み合わせて治療していくことが必要である.
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