日本ペインクリニック学会誌
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痛み刺激受容の分子機構
カプサイシン・Vanilloid receptor と疼痛制御
富永 真琴
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2002 年 9 巻 2 号 p. 57-61

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抄録
近年, 感覚神経特異的に発現して侵害性刺激によって活性化するいくつかのイオンチャネル型受容体の遺伝子クローニングがなされた. この受容体の一つ, トウガラシの主成分カプサイシンの受容体VR1は6回膜貫通型のイオンチャネルであり, 生体において痛みを惹起するカプサイシン, プロトン, 43℃を超える熱によって活性化される. このカプサイシン受容体の機能は, 受容体欠損マウスの行動解析によっても確認された. 感覚神経終末における痛み刺激受容を調節している炎症関連メディエイターの一つである細胞外ATPのVR1活性に対する効果を検討すると, ATPはカプサイシン活性化電流およびプロトン活性化電流を増大させた. また, ATP存在下ではVR1の熱による活性化温度閾値は42℃から35℃に低下し, 体温でもVR1が活性化して痛みを惹起する可能性が示された.細胞外ATPは代謝型P2Y1受容体に作用してPKC活性化を介してVR1機能を制御することが判明した. このATPの効果は後根神経節細胞でも観察された. これは, 細胞外ATPによる疼痛発生の新しいメカニズムである. このように疼痛発生の分子機構の解明が進み, 新たな鎮痛薬開発につながるものと期待される.
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© 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
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