精密機械
Print ISSN : 0374-3543
エネルギと環境
伊原 正治郎
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1973 年 39 巻 458 号 p. 272-279

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抄録

エネルギが環境問題のキー・ワードになる理由の一つは, エネルギの流れを通して人間系および環境系を構成する多数の因子に, 相関性と連続性を見いだすことができ, それらを統一された1個の複合システムとして把握できることにある.このような考察から, 技術経済システムと環境システムという二つのシステム間の協調の問題を環境問題と定義することができる.他の一つは, 技術経済システムの維持と発展の過程で多量のエネルギを消費し続けてきたため, 環境が汚染されつつあると同時にエネルギ源の枯渇のおそれが生じていることである.エネルギ資源の確保とエネルギ消費に伴う環境汚染の防止は, 現代社会の本質的に重要な長期的問題であるが, われわれがこの問題に確信の持てる解決を見いだすためには, ごく近い将来に多くの仕事をしなければならないであろう.現状は, 問題の方向がわかり始めたばかりであるにすぎない.
本文では, 問題の方向をいくらか体系的に見るために, まず二つのシステムにおける主要なエネルギの流れの概略を示し, それらの資源量および消費量として見積られている数値を整理する.次にエネルギ消費による環境汚染に関して現在知られているいくつかのデータを要約してみる.解決法についての現状は, 確実に一致した見解というものが存在していないようであるが, いくつかの代表的な考え方について最後に述べてみたい.

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