学校心理学研究
Online ISSN : 2432-2865
Print ISSN : 1346-5732
原著論文
Improving Normative Behaviors and Learning Attitudes of First-Year High School Students with SEL-8Career
Eriko ITOReizo KOIZUMI
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2025 年 24 巻 1 号 p. 43-56

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抄録

本研究は,「高校生のための社会性と情動の学習(SEL-8Career)プログラム」の実践が,高校生活への適応において重要な時期と考えられる高校1年生の学校適応に与える効果を検討したものである.このプログラムを,公立高校1校の1年生217名(介入群)を対象に,コーディネーター教員の主導で教育課程に位置付けて実践した.学習は5月~11月の期間に,クラス単位で1回50分ずつ7回実施した.

その結果,介入群は他の公立高校1校の1年生対照群(150名)に比べて,社会的能力(自己評価)の8つの下位尺度の中の自己のコントロール,対人関係,生活上の問題防止のスキル,人生の重要事態に対処する能力の4つの下位尺度,そして社会的能力の総合得点で適応的な得点変化を示した.そして,規範行動(自己評価)では,3つの下位尺度のうちの2つ(対人間で順守すべき行動,個人として順守すべき行動)と規範行動の総合得点で好ましい得点変化が見られた.また学習面(自己評価)でも適応的な得点変化が得られた.さらに,行動面では介入群の欠席率と転退学生徒数が対照群よりも低かった.実践に参加した介入群の学級担任教師6名は,生徒の社会的能力と学習への取り組みが向上したと評価していた.また,同様に実践に参加した学級副担任教師8名を加えた14名の教師による評定では,SEL-8Careerプログラムの実践によって介入群の生徒の社会的能力が向上したと捉えられていた.これらの結果を,プログラムに関する今後の課題と教育実践の観点から考察した.

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