2025 年 25 巻 1 号 p. 69-81
小・中学校でいじめの被害も加害も体験した女性の心理プロセスを時間経過に沿って明らかにすることを目的に,成人女性8名に回顧法による面接調査を行い質的に分析した。その結果,小・中学校でいじめの被害も加害も体験した女性は,自分も含めた人間不信を強め,人と関わる恐怖が長期間続くことが示された。そして,新たな対人関係でもがくことといじめ被害・加害体験の内省により人と関わる意欲を回復していくが,再び人と関わる恐怖が生じやすく,その度に自分を含めた人間不信が生じ,対人関係でのもがきといじめ体験の内省を繰り返すため現在でも親密な関係を躊躇することが示された。いじめの被害も加害も体験した女性は被害のみの者と類似したプロセスを辿るが,またいじめられる恐怖に加え,またいじめてしまう恐怖があり人と関わる恐怖の克服やいじめた自分の受容に難航すること,また,加害のみの者に比べ自己への否定的感情や加害を後悔する気持ちが生じやすいことが示唆された。本研究では,小・中学校でのいじめ被害と加害の体験が10~40年もの長期にわたり対人関係や自己受容に悪影響を及ぼすことが示され,小・中学校でのいじめ対応の重要性が明らかとなった。