環境社会学研究
Online ISSN : 2434-0618
特集1 環境社会学は東日本大震災にどのように応答してきたか
原発災害における加害者の「応答の不在と暴力性」─低線量被ばくエリアに生きる経験を題材に─
西﨑 伸子
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2021 年 27 巻 p. 54-68

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抄録

本稿の目的は,原発災害の被害を加害企業の「応答の不在と暴力性」というキーワードで読み解き直すことである。環境社会学の被害構造論では,不可視化される被害を徹底的に明らかにすることが試みられてきたが,加害者側の行為分析は十分とはいえなかった。そこで,加害者側の「応答の不在と暴力性」が被害者の生活再建においてどのような影響を与えているのかについて,原発損害賠償請求を事例に,自己再帰的に分析するオートエスノグラフィの手法で明らかにし,環境社会学からの応答のあり方を検討した。被害者が災害前の日常を取り戻すためには,加害者側の謝罪と補償が重要になるにもかかわらず,損害賠償を請求することでしかそれが達成されないという「応答の不在」が常態化している。さらに,損害賠償請求をおこなうには,加害者側が決めたルールに従う必要があるために,二次被害ともいえる「応答の暴力性」が発動することが明らかになった。これは,東電および国が反証の際に繰り返しておこなう被害者に対する直接的な加害行為のことで,無効化,周辺化,単純化として特徴づけられる。最後に,生活再建を支えながら被害を可視化させるフィールド学問としての環境社会学的応答について言及した。

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