抄録
ナトリウム代謝管理のピットフォールの代表としては、臨床現場でもっとも頻度の高い低ナトリウム血症に対しての拙速なナトリウム静脈投与による病状の悪化があげられる。心不全、肝硬変、腎不全など背景疾患が明らかな場合のナトリウム代謝異常は原疾患の治療が優先されるが、背景疾患が不明な場合、腎性、腎外性のナトリウム喪失の検索とともに、調節系であるバゾプレッシンやアルドステロンの挙動と腎臓の反応性を推定し、また細胞レベルでの細胞膜透過性異常や、ナトリウム以外の浸透圧形成性物質の貯留の可能性も検討する。
鑑別に必要な臨床検査としては、循環血漿量、血清浸透圧、尿中ナトリウム濃度などが有用であり、これらを参考にしながら原因病態を分析することが適切な対処につながる。ナトリウムの補充よりも水制限やホルモン療法など原因疾患の対応の方が有効であることも多い。