抄録
中心静脈カテーテル (CVC) 留置に関連した合併症である心タンポナーデ (CVC原性心タンポ) により死亡した40歳代の生体肝移植症例を報告し、CVC原性心タンポの特徴と予防対策を文献的に考察した。本症例ではCVC先端を右心房に留置して、同時にCVC挿入により右緊張性気胸が合併した。そのためCVC先端が右心房に持続的に接触して、輸液の血管外漏出が起こり、CVC原性心タンポが発生した。CVCの右房内留置はCVC製品の添付文書に禁忌事項として記載されている。CVC原性心タンポは欧米で143例 (死亡率72.1%)、本邦で14例 (死亡率35.7%) の報告がある。新生児に多く、CVC先端の穿孔または接触圧迫で輸液が心嚢腔に漏出して起こる。CVC原性心タンポの予防にはCVC先端を胸部X線写真上で気管分岐部と同じ高さ (心外膜の外) に管理することが重要である。