抄録
目的 : 大腸炎に対するトリプトファンの効果についての知見は少ない。我々は、デキストラン硫酸ナトリウム (DSS) 誘発性大腸炎動物モデルを用い、トリプトファンの抗大腸炎効果を検討した。
方法 : C57black6マウスを、通常飼料 (CE-2) を与えた対照群とl-トリプトファン含有CE-2を与えたトリプトファン群 (各群8匹) に分け、3.5%DSSを12日間投与して大腸炎動物モデルを作成した。DSS投与後、体重減少、血便の頻度について観察した。さらに12日後に大腸を摘出し、組織学的検査、大腸組織中ニトロチロシン値、尿中nitrate and nitrite (NOx) 値について検討した。
結果 : トリプトファン群で、体重減少や血便頻度、大腸組織中ニトロチロシン値が有意に低下し、組織学的にも大腸炎の軽減効果を認めた。NOx値は、両群間で有意差は認めなかった。
結論 : DSS誘発性動物モデルにおいて、トリプトファンの投与による有意な大腸炎の軽減効果が認められた。その機序のひとつとして、抗酸化ストレス作用が推測された。