抄録
症例は91歳、男性。保存期慢性腎臓病 (CKD) ステージ5 (血清Cr値4.41mg/dL、eGFR10mL/分/1.73m2) を基礎疾患とし、IV度仙骨部褥瘡 (6.5×7.5cm D5E6s9G4N3P6)・炎症反応高値 (CRP24.6mg/dL) を生じ入院。まず末期CKDの病態改善のため、エネルギー量・蛋白質投与量を控えた栄養管理を開始し、褥瘡に対する局所治療を行った。全身状態・腎不全が安定後、褥瘡に対してエネルギー量・蛋白質投与量を漸増し、治癒促進を図った。褥瘡が縮小・改善後、腎機能悪化が見られたため、入院時の栄養投与量に戻した結果、腎機能は血清Cr値2.96mg/dL、炎症反応もCRP0.39mg/dLまで改善した。また褥瘡も2.8×4cm D3e1s6g1まで改善し特別養護老人ホームへ退院できた。褥瘡を有する慢性CKD患者の栄養管理では、血清尿素窒素や血清Cr値などと褥瘡の状態を考慮しながら、エネルギーや蛋白質の投与量を調整することが、病態改善に重要である。