静脈経腸栄養
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原著
がん終末期における輸液栄養治療を取り巻く問題
医学的に適切な治療方針と患者・家族の希望に相違がある場合の原因と対応
中島 信久日下部 俊朗
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2013 年 28 巻 5 号 p. 1101-1108

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抄録

【目的】がん終末期には医学的に適切な輸液栄養治療の内容が患者・家族の希望と異なることがある。本研究の目的はこの問題の原因や対応を明確にすることである。
【方法】最近1年間に経験した29例の原因、対応、転帰を調査した。
【結果】原因: a) 病状理解の不足が19例、b) 輸液治療への思いが10例であった。対応: a) の14例で話し合いの上、適切な治療に変更した。b) の6例で患者・家族の思いを共有し支援した。理解を得られなかったa) の5例とb) の4例では彼らの希望に配慮した治療を暫定的に実施し、患者への影響を定期的に評価する方法 (Time-limited trial) を試みた。転帰: 本trial後2~7日で、全例で溢水徴候の増強や栄養状態の改善がないなどのため治療内容を変更した。本trialによる患者への負担はその後の治療により改善した。
【結論】がん終末期に輸液栄養治療を適切に行うためには、患者・家族との良好なコミュニケーションと本trialを行う際の患者負担への配慮が不可欠である。

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© 2013 日本静脈経腸栄養学会
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