抄録
がん生存者の増加とともに、がんリハビリテーションの重要性が注目されている。開胸、開腹術の周術期がんリハは包括的に行われる。すなわち、術前から介入し予防的リハとして評価・訓練を行い、術後早期に回復的リハとして再開する。周術期リハの中心は呼吸リハであり、手術に伴う呼吸器系へのダメージを最小限にし、術後合併症を減少させることが主な目的である。さらに食道がん等の上部消化管手術においては嚥下障害に対するリハも重要となる。近年、人口の高齢化、がん罹患者数の増加とともに高齢者の積極的手術適応が増える傾向にあるが、高齢者は予備能が不十分なために若年者に比べ合併症の発症の増加や十分な回復が得られないおそれがあるので、より積極的ながんリハ介入が必要である。周術期がんリハにより、術後合併症の減少や廃用症候群の予防ができれば、がん患者のQOLの向上とともに入院期間の短縮も可能となる。
周術期がんリハは決して特殊なリハではなく、全身に出現する障害を評価し、訓練を行うことで改善、対処していく総合リハである。その視点から周術期リハ、高齢者リハに対して、マンパワーや技術の習熟そしてエビデンスの構築をさらに行うことが求められている。