日本周産期・新生児医学会雑誌
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産科教育セミナー
産科危機的出血に対する対応法は?
荻田 和秀
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2021 年 56 巻 4 号 p. 637-641

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抄録

 はじめに

 近年の妊産婦死亡数は日本産婦人科医会の妊産婦死亡症例検討評価委員会(池田智明委員長:三重大学産婦人科学教室教授)での検討では約40例/年と報告されている.その内訳は産科危機的出血,脳出血,羊水塞栓症などが上位を占めており,産科危機的出血に対する母体救命医療は防ぎ得る周産期の死亡をなくすためには極めて重要であり,そのためには産科危機的出血の予防と早期の覚知,チームでの対応が必須であることはいうまでもない.処置に入る前に重要なのは早期の覚知である.妊産婦死亡症例検討評価委員会の報告では死に至るような産科危機的出血は分娩後 30分以降から起こることが多い.従って分娩が終了してもモニターなどで監視することを怠ってはならない.また,文献的にも経験的にも産科出血は過小評価しやすい.従ってややオーバートリアージであっても「第一印象」を大切にすべきである.

 本稿ではいかに早く産科危機的出血を覚知するか,および産科危機的出血発生時の対応について,産科危機的出血への対応指針アルゴリズム(2017)をもとに概説する.

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