2021 年 57 巻 1 号 p. 175-181
無症候の母体より出生した単純ヘルペス1型ウイルス(HSV-1)による壊死性網膜炎の早産児例を経験した.症例は在胎29週4日,出生体重1,321gの男児.母体に性器ヘルペスの既往はなく口唇ヘルペスの既往があった.破水を主訴に初診し,計測値で妊娠29週1日と診断した.破水後3日目に帝王切開分娩で出生し,RDSで日齢5まで人工呼吸器管理後,CPAPに移行した.日齢4に紅斑を認め,翌日消退し,日齢12より無呼吸発作増悪で治療を要した.日齢29の眼科診察で壊死性網膜炎,超音波検査で脳室拡大を認めた.前房水および髄液HSV-DNA陽性,髄液HSV-1抗体陽性,HSV-2抗体陰性でHSV-1感染症と診断した.アシクロビルを21日間静注後,内服投与に移行したが,網膜剥離は進行し,日齢63の頭部MRIで多嚢胞性脳軟化症を認めた.社会背景や非特異的感染所見からのHSV母子感染早期鑑別が重要である.