日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
Print ISSN : 1348-964X
原著
産科病棟におけるケタミン塩酸塩使用症例:その有効性と安全性について
三宅 麻由衣笠 万里西尾 美穂松井 克憲
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2021 年 57 巻 1 号 p. 31-36

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抄録

 ケタミン塩酸塩は日本では麻薬に指定されているが,われわれは産科病棟に常備して緊急時に使用してきた.2007年1月から2018年12月までに同病棟でケタミンによる静脈麻酔を行った32症例について,その有効性と安全性を評価した.22例は胎盤用手剥離術施行例であり,出血量は平均1,096mLであったが,輸血例はなかった.それ以外は分娩後子宮出血止血処置が3例,腟裂傷・血腫の止血処置が4例,III度およびIV度会陰裂傷縫合が3例であった.計5例に輸血を要したが,その後の回復は良好であった.ケタミン使用量は30~80mg(平均43mg)であり,単独でも良好な鎮痛・鎮静効果が得られ,血圧低下・呼吸停止・誤嚥はみられなかった.またケタミン投与後の授乳による新生児への影響は認められなかった.ケタミンは有効かつ安全な麻酔薬であり,母体救命の視点から緊急時にはただちにアクセスできることが望ましい.

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