2021 年 57 巻 2 号 p. 295-300
本邦は世界でも有数のヨウ素摂取過剰国である.新生児期の過剰なヨウ素摂取は甲状腺機能に対して有害性をもつことが知られているが,甲状腺機能の未熟な低出生体重児のヨウ素摂取状況に関する報告は少ない.当院の経腸管栄養が安定した低出生体重児37例(中央値:日齢16,出生体重1,691g)のヨウ素摂取量を算出し後方視的に検討した.尿中ヨウ素濃度は中央値300μg/L,ヨウ素摂取量は中央値43.8μg/dayとヨウ素推奨摂取量以下であった.一方,6例が耐容上限量以上,その中でもヨウ素摂取量が1,000μg/dayを超えた3例全例で甲状腺機能異常を認めた.栄養方法では母乳摂取量が多い児でヨウ素摂取量が多い傾向があった.母乳は貴重なヨウ素摂取源だが,母乳のヨウ素含有量には個人差があり,中には極端に高い症例があるため,尿中ヨウ素濃度から児のヨウ素摂取状態を把握することは重要である.