日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
Print ISSN : 1348-964X
原著
早産期の出血性ショックに関する検討
本間 千夏西村 陽子古谷 菜摘倉崎 昭子近藤 春裕長谷川 潤一鈴木 直
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2021 年 57 巻 2 号 p. 315-320

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抄録

 【目的】早産期と正期産の時期で,出血性ショックのなりやすさに違いがあるかどうかを明らかにすること.

 【方法】2011年1月-2020年3月に,当院で施行した単胎の帝王切開例で,術中出血量が2,000mL以上であったものを対象にcase-control studyを施行した.帝王切開に続き子宮全摘出を施行した症例は除いた.対象を妊娠35週未満,35週以降の2群に分けた.診療録より,帝切の適応,バイタルの推移,輸血量などのデータを収集し,比較検討した.

 【結果】総分娩数6,194例中,帝王切開は2, 361例あり,単胎で子宮全摘出施行例を除いた出血2,000mL以上の症例は64例(1%)あった.35週未満群は12例(19%)であった.35週未満群と35週以降群で,それぞれ,出血量の中央値(範囲)は2,466(2,010-4,839)mL,2,391(2,013-4,320)mL(ns),最高Shock indexは1.1(0.7-1.8),1.0(0.7-2)(ns),最高心拍数は100(70-145)bpm,100(70-140)bpm,最低収縮期血圧は90(70-110)mmHg,90(60-120)mmHg,胎盤娩出からSI > 1になるまでの時間は12.5(0-90)分,5(0-75)分(ns),SI >1になるまでの出血量1, 093(210-1,900)mL,957(320-3,150)mL(ns),SI > 1になった後SI < 1に回復するまでの時間17.5(0-90)分,7.5(0-75)分(p=0.010)であった.

 【結論】本検討の対象のうち妊娠35週以前,以後で,出血量,バイタルサイン異常値の分布や,SI > 1になるまでの時間に違いはなかったが,妊娠35週未満の群の方がひとたびショックバイタルになると,バイタルサインが正常に戻るまでの時間を要することが示唆された.

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