2022 年 58 巻 1 号 p. 110-114
分娩第2期の続発性微弱陣痛に対してオキシトシンの点滴をうけていた初産婦でみられた臍帯内出血を報告する.正常胎児心拍数陣痛図(CTG)所見から突然遷延胎児徐脈が出現するようになり,基線細変動も乏しく,子宮底圧迫法を併用した吸引分娩をおこなって児を娩出した.胎盤と臍帯の病理検査をおこなったところ,胎盤には胎児機能不全を直接生じるような異常所見は認められず,臍帯の胎盤に近い部位のワルトンジェリー壁で包まれた内部で出血が生じていた.血管の弾性繊維と膠原繊維をelastica van Gieson染色で,血管平滑筋をsmooth muscle actinに対する抗体を用いた酵素抗体法で調べたところ臍帯静脈壁の一部が断裂していることが確認された.