日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
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症例報告
人工妊娠中絶後に母体に肺うっ血及び胸水貯留を認めた胎児共存奇胎の1例
加藤 優里川村 裕士品川 明子折坂 誠黒川 哲司服部 由香吉田 好雄
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2022 年 58 巻 1 号 p. 163-168

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抄録

 胎児共存奇胎は,全胞状奇胎と正常胎児が共存する稀な双胎妊娠であり,妊娠継続により妊娠高血圧腎症の発症リスクを伴う.我々は,妊娠初期に母体高血圧および蛋白尿を呈した胎児共存奇胎の1例を経験した.母体適応で人工妊娠中絶が選択されたが,子宮内掻爬術後1日目に肺うっ血と胸水貯留の増悪を認め,加療を要した.妊娠初期であっても妊娠高血圧腎症様の徴候を呈するリスクを認識しておくことは,胎児共存奇胎の妊娠母体を管理する上で重要である.人工妊娠中絶が選択される場合も,処置前後の母体のバイタルサインや理学所見のモニタリングを注意深く行い,心不全や呼吸不全に備えるべきである.

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© 2022 日本周産期・新生児医学会
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