2022 年 58 巻 1 号 p. 158-162
胎盤嚢胞は胎盤胎児面より発生する嚢胞性病変で,妊娠経過に影響は少ないとされてきたが,胎児発育不全をきたすことがあり,母体の膠原病との関連が報告されている.今回我々は皮膚筋炎合併妊娠で胎盤嚢胞と胎児発育不全を認めた症例を経験した.症例は37歳初産婦,妊娠28週の超音波検査にて胎盤の嚢胞性病変,また925g(-1.6SD)の胎児発育不全,CTGにて高度変動一過性徐脈を認めたため入院管理とした.胎児発育は緩慢で,妊娠30週4日に胎動の減少,CTGにてvariabilityの減少,繰り返す軽度変動一過性徐脈を認めたため,胎児機能不全の診断で緊急帝王切開を施行した.児は1,043gの女児でApgar Score1分値6点,5分値9点で出生後経過に異常はなかった.胎盤嚢胞の発生にはフィブリンの堆積やX細胞の関与が指摘されており,本症例の胎盤病理所見においても嚢胞周囲のフィブリン沈着やX細胞の増生が認められた.