2022 年 58 巻 1 号 p. 221-225
本症例は低ホスファターゼ症の児で,出生直後より呼吸障害を認め日齢13よりビタミンB6依存性痙攣を生じた.血清ALP値の著明な低下,肋骨菲薄化と四肢のくる病様変化より周産期重症型HPPと診断した.痙攣と脳波所見はピリドキシン投与後,速やかに消失した.日齢22よりALP酵素補充療法(ERT)を開始し,生後2カ月で人工呼吸器を離脱した.骨石灰化が進み,生後3カ月でくる病様所見はほぼ消失し,生後5カ月で退院した.周産期重症型HPPの多くは責任遺伝子がホモ接合性変異の報告であるが,本症例はc.1559delTのヘテロ接合性変異であり,着目すべき点と考えた.HPPの臨床経過はALPL遺伝子バリアントからある程度予測可能であるが,同じ遺伝子バリアントの患者でも症状の重症度は異なる可能性がある.遺伝型と臨床経過との関連を評価する上でも今後の発達発育および歯科的フォローアップが重要である.