日本周産期・新生児医学会雑誌
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症例報告
腰部リンパ管奇形が出生前に増大し,嚢胞内出血から慢性貧血に至った一例
川道 彩夏森内 芳川﨑 薫最上 晴太近藤 英治万代 昌紀
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2022 年 58 巻 2 号 p. 300-305

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抄録

 胎児リンパ管奇形は,全身のリンパ組織に生じる良性の先天的形成異常である.胎内で稀な発生部位である腰部リンパ管奇形が徐々に増大し,嚢胞内出血により慢性貧血に至った一例を経験したので報告する.症例は27歳初産婦.妊娠28週に初めて胎児の腰部腫瘤を指摘され,受診となった.超音波検査所見および骨盤MRI所見より,リンパ管奇形を疑った.腫瘤は徐々に増大し,妊娠38週6日に選択的帝王切開術を施行した.出生直後の採血にてHb8.0g/dLと腰部腫瘤内への出血に伴う貧血を認め,輸血を行った.出生後も腫瘤は増大し,腫瘤切除術を施行し,リンパ管奇形の診断に至った.胎児期に嚢胞の増大を認めるリンパ管奇形は,貧血や出生後の感染の可能性を考慮し,超音波検査やMRIにより嚢胞内出血の有無や貧血の進行を経時的に評価しながら,娩出時期や娩出方法を慎重に検討する必要がある.

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© 2022 日本周産期・新生児医学会
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