日本周産期・新生児医学会雑誌
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Print ISSN : 1348-964X
教育講演
妊産婦蘇生ガイドライン 2020
田中 博明
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2023 年 58 巻 4 号 p. 640-643

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抄録

 はじめに

 日本の周産期領域における蘇生法の歴史は浅く,その中でも新生児分野は早くから取り組まれてきた.一方,妊産婦における蘇生法の標準化・普及は遅れていた.2010年に妊産婦死亡の減少を目的に「妊産婦死亡報告事業」と「妊産婦死亡事例検討評価委員会」が設置され,日本の妊産婦死亡の実情が明らかになった.その後,2015年に妊産婦救急医療におけるシミュレーションの教育・普及を目的とした「母体救急救命システム普及協議会(J-CIMELS)」が設立され,妊産婦蘇生法の研修会が全都道府県で実施されるようになった.これらの様々な活動に加え,周産期医療に携わる医療関係者の努力によって,日本の妊産婦死亡率は徐々にではあるが低下してきている.しかし,妊産婦蘇生に関する標準的なガイドラインは,これまでに存在していなかった.2021年,世界で初めてGRADEシステムを用いた妊産婦蘇生のガイドラインである「日本蘇生ガイドライン2020(妊産婦)」が日本において作成された.本講演では,同ガイドラインの成り立ちから概要までを解説する.

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© 2023 日本周産期・新生児医学会
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