日本周産期・新生児医学会雑誌
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次世代遺伝子解析装置を用いた難病の原因究明,治療法開発
武内 俊樹
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2023 年 59 巻 2 号 p. 156-165

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抄録

 新生児期〜小児期に発症する疾患では,染色体・遺伝子の異常が多くを占める.原因診断の検査として,わが国では,Gバンド染色体検査に加えて,2020年からはマイクロアレイ染色体検査が保険収載され,臨床現場で広く使われている.先天異常症候群の発症原因となる染色体・遺伝子の異常の多くは,DNAレベルの変化であり,次世代シーケンサー(遺伝子解析装置)による網羅的遺伝子解析はこの点で優れている.一部の疾患については,DNAレベルの解析がパネル検査として保険内で行われているが,未診断患者に対するエクソーム解析はまだ保険収載されていない.

 「難病」とは,一般には診断と治療が難しい病気を意味する用語として使われるが,同時に,わが国では国の施策の中で定義された特定の疾患群を指す用語として使われてきた.わが国の難病研究には長い歴史があり,希少疾患の診断治療研究に大きな貢献をしてきた.

 本稿では,まず網羅的遺伝子解析の技術的側面について解説し,国の施策の中における「難病」の定義,位置づけとその取り組みを概説する.網羅的遺伝子解析,特に次世代遺伝子解析装置を用いた原因不明疾患の診断・治療研究の例として,日本医療研究開発機構の難治性疾患実用化研究事業の中で行われている未診断疾患イニシアチブ(IRUD:Initiative on Rare and Undiagnosed Diseases)について概説する.周産期・新生児領域においても網羅的遺伝子診断は有用である.成育疾患克服等総合研究事業「新生児集中治療室における精緻・迅速な遺伝子診断に関する研究開発」についても概説する.

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