2024 年 60 巻 1 号 p. 127-131
Edwardsiella tarda(E. tarda)による菌血症は予後不良で致死率が約50%と報告されている.また妊婦菌血症は本人のみならず胎児・新生児への伝播が懸念される重篤な感染症である.症例は33歳初産婦とその出生児.羊水過少のため在胎39週で分娩誘発をしたが,母体発熱と胎児機能不全を認め緊急帝王切開で分娩となった.母の発熱時に採取した血液培養からE. tardaが分離されたが抗菌薬治療で改善した.出生児は高度な羊水混濁を認めたため出生直後から抗菌薬治療を開始した.児の血液と脳脊髄液培養は陰性であった.胎盤の病理診断は急性絨毛膜羊膜炎・臍帯炎であった.文献検索では本症例は世界で4例目の妊婦E. tarda菌血症例である.過去3例では胎児死亡や新生児の中枢性疾患を合併したが,本症例では速やかな抗菌薬投与により児の感染は制御され,母児共に後遺症なく治癒した世界初例である.