2024 年 60 巻 1 号 p. 147-150
COVID-19は医療に変容をもたらし,産科領域でも当初他に適応がない感染妊婦に無条件に帝王切開が施行され,当院でもそれが原則だった.一方で帝王切開が間に合わず緊急に経腟分娩が必要な場合も想定されたため,感染対策分娩室を設けることにした.それは通常の個室に一部開放式チャンバ付きでHEPA(High Efficiency Particulate Air)フィルタを装着した大型空気清浄装置(Barriflow®)を置き,その中で経腟分娩を行う方法であり,これを用いてCOVID-19罹患妊婦の緊急経腟分娩を行った2例について報告する.いずれも当院到着時,分娩切迫があり帝王切開が間に合わないと判断され,感染対策分娩室へ収容後1時間以内に経腟分娩となった.妊婦はBarriflow®の中で出産に臨み,結果的に出生児とスタッフに感染は起きなかった.感染対策では十分な換気が重要だが,それが困難な施設にとっては,本例の示す感染管理の在り方は大いに参考になると思われた.