日本周産期・新生児医学会雑誌
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症例報告
広範囲な体壁欠損を合併した羊膜索症候群の一例
若松 宏昌閑野 将行清水 正樹
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2024 年 60 巻 2 号 p. 240-244

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抄録

 羊膜索症候群は,胎児期に羊膜が破綻し形成される羊膜索により,四肢,頭蓋,顔面,体幹などに多発奇形を来す症候群である.羊膜が破綻する時期により発生する奇形が異なり,破綻が早期に起こるほど頭蓋や顔面,胸腹壁欠損などの重篤な症状を呈する.本症例は胎児診断で髄膜瘤と脊柱側弯が指摘されていた.出生後,髄膜瘤に隣接した広範囲な体壁欠損を認め,腹膜様の膜から肝臓や脾臓,肺が透見可能であった.露出臓器の損傷や感染リスクを考慮し,緊急で皮弁形成術・被覆術を施行した.足趾の絞扼輪や内反足などの合併所見を認め,体壁欠損は羊膜索症候群の一症状と判断した.点状軟骨異形成症末節骨短縮型を示唆する所見の合併があり,羊膜索症候群との関連性は明らかではないが,母体に使用した抗TNFα抗体製剤の影響が推測された.多彩な奇形を呈する症例で絞扼輪形成など特徴的な所見を認める場合は,羊膜索症候群を考慮する必要がある.

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© 2024 日本周産期・新生児医学会
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