日本周産期・新生児医学会雑誌
Online ISSN : 2435-4996
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症例報告
新生児同種免疫性血小板減少症の発症予防を目的として母体への免疫グロブリン療法を行った一例
山形 知央小松 摩耶千草 義継川村 洋介松坂 直山口 綾香髙倉 賢人上田 優輔最上 晴太万代 昌紀
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2024 年 60 巻 2 号 p. 271-275

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抄録

 新生児同種免疫性血小板減少症(NAIT)は母体で産生された血小板抗体によって生じる血小板減少症で,児に頭蓋内出血をきたすこともある.次回妊娠時にもNAITの発症リスクが存在するが有効な周産期管理指針は存在しない.症例は38歳,4妊2産.第2子は出生直後に点状出血があり,血小板数30×103/μLであった.母体から抗ヒト血小板特異抗原(HPA)-4b抗体が検出され,NAITが疑われた.第3子を妊娠し,羊水検査で児がHPA-4a/bを保持していることが判明した.児にNAIT発症が危惧されたことから,妊娠30週から免疫グロブリンを1週間ごとに投与し,妊娠39週に経腟分娩した.児の血小板数最低値は60×103/μL(日齢1)であったが自然回復し,合併症をきたさなかった.同胞にNAITが疑われた際には,羊水検査でHPAタイピングを行い,免疫グロブリン療法を行うことで,児の良好な周産期予後が得られる可能性がある.

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© 2024 日本周産期・新生児医学会
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