2024 年 60 巻 2 号 p. 271-275
新生児同種免疫性血小板減少症(NAIT)は母体で産生された血小板抗体によって生じる血小板減少症で,児に頭蓋内出血をきたすこともある.次回妊娠時にもNAITの発症リスクが存在するが有効な周産期管理指針は存在しない.症例は38歳,4妊2産.第2子は出生直後に点状出血があり,血小板数30×103/μLであった.母体から抗ヒト血小板特異抗原(HPA)-4b抗体が検出され,NAITが疑われた.第3子を妊娠し,羊水検査で児がHPA-4a/bを保持していることが判明した.児にNAIT発症が危惧されたことから,妊娠30週から免疫グロブリンを1週間ごとに投与し,妊娠39週に経腟分娩した.児の血小板数最低値は60×103/μL(日齢1)であったが自然回復し,合併症をきたさなかった.同胞にNAITが疑われた際には,羊水検査でHPAタイピングを行い,免疫グロブリン療法を行うことで,児の良好な周産期予後が得られる可能性がある.