日本周産期・新生児医学会雑誌
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症例報告
適切な施設連携によって救命し得た産科危機的出血の1例
田口 朋子伊東 麻美竹ノ子 健一横山 美奈子大石 舞香田中 幹二
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2024 年 60 巻 2 号 p. 266-270

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抄録

 青森県は地形的特徴や気候条件などにより周産期センターへの搬送に時間を要する分娩施設も存在し,産科危機的出血時には特に適切な対応が必要となる.今回,適切な連携により救命し得た産科危機的出血例を経験した.クリニックAでの鉗子分娩により腟壁裂傷を生じ,2,000mL超の出血にてSI>2.0の状態で当院へ搬送依頼があった.当院への搬送時間を考慮すると生命危機に瀕する可能性が極めて高く,まずAから15分程度の総合病院Bでの応急処置後の搬送を指示.B病院でガーゼ圧迫止血と輸血処置が施された後当院搬送となった.ガーゼを抜去すると腟壁より多量の動脈性出血あり再びSI>2.0に陥ったが,動脈塞栓術にて止血し救命できた.SI>2.0の遠隔施設からの産科危機的出血搬送依頼であったが,適切な連携により救命し得た.本県のような周産期環境に置かれた地域では,母体救命のため状況によりこうした病診連携も考慮すべきである.

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© 2024 日本周産期・新生児医学会
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