日本周産期・新生児医学会雑誌
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症例報告
胎児胸腔内嚢胞を呈した胃重複症の一例
吉井 るい精 きぐな宮居 弘輔植田 江莉田中 圭一朗村越 毅
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2025 年 61 巻 1 号 p. 169-173

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抄録

 妊娠36週の妊婦が胎児胸腔内嚢胞を指摘され当院紹介となった.胎児超音波検査・MRIで,右胸腔中~後縦隔に,肺外から肺を圧迫する直径3cm程度の単房性嚢胞を認めた.心臓・脊椎との連続性はなく,比較的厚い嚢胞壁には明らかな血流はなかった.内部の大部分は均一なhypoechoicであり,所見から前腸重複嚢胞を疑った.妊娠38週で出生後,明らかな呼吸障害なく経過していたが,日齢6に嚢胞が右主気管支を圧排したことにより呼吸障害が出現し,日齢11に開胸嚢胞摘出術を施行した.組織学的検査の結果,胃重複症の最終診断となった.胃重複症は腸管重複嚢胞の1つで,孤立性に胸腔内に認められる例は稀である.出生前に胸腔内嚢胞を検出した際は位置・性状から鑑別を絞り,出生時や出生後の適切な管理に繋げることが重要である.嚢胞の大きさだけでなく,気管支との位置関係を把握することが出生後の呼吸障害の予測において有用である可能性がある.

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