そけいヘルニアにおけるヘルニア嚢の形態に関する記載は古くからあり, それらに対する用語も用意されている.しかし, 実際に手術例について注意深く観察していると, 予想以上の形態の多様さもさることながら, それらに与えられたいろいろの命名が, 所謂embryo pathogenesisの立場からすれば, 極めて不合理な場合が少なくないことに気付いている.著者らはさきに1200個についての形態を報告したが, それが角田によって臨床小児外科全書に引用されている.そこでさらに症例数を増やし, ヘルニア嚢の形態の分類にとどまらず, 用語を整理し, あわせてそけいヘルニアの成り立ちを形態学の立場から説明しようとするのが本論文の目的である.