新生児外科の代表的な疾患とみなされている先天性食道閉鎖症の歴史は, とりもなをさず小児外科の発展の歴史と云うことができる.1941年Haightが本症の一期的根治術に成功して以来, 新生児外科患者の管理や小児麻酔の進歩などとともに, 大規模な新生児外科センターの設立などの結果本症の救命率は著るしく向上した.1962年頃までに欧米の主要な小児外科センターでは, 一期的根治術によって, 本症の70〜80%が救命されるようになった.1962年Holderらは, 極端な未熟児の肺合併症を有するpoor risk患者に対して, 胃瘻, 気管食道瘻の閉鎖, 次いで食道吻合と手術を分割しておこなうstage operationの考えを発表した.stage operationの成績は, 1965年頃, HaysらKoopらによって発表され, 重症例の救命に役立つものと考えられてきた.小児外科の著るしくたち遅れた本邦では, 多くの人々の努力にもかかわらず, 一期的根治手術の成績が欧米のようにその限界と思われるまで向上しないうちにstage operationの考えがとりいれられた結果, 手術を一期的におこなうべきか, それとも多段階的におこなうべきかという基本的な治療方針にも混乱が認められる. 私達は, 経験第1例以来, 本症C型の大多数は一期的根治術により治療する方針で, 手術方法や術前術後管理の重要な点については, 既に報告した.本論文では, その後の経験例を含めた21例の治療成績とともに, 重症例や死亡例の検討を加え, stage operationの適応をより明確にしたいと考える.
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