近年我国の小児の死亡率は新生児管理の改善・小児感染症の激減などにより欧米諸国と同様に悪性新生物による死亡が事故死についで高率をしめるようになり, 社会的にも「がんの子供を守る会」の結成など小児悪性新生物が大きな問題となっている.これに伴いここ数年の小児外科の進歩もめざましく腫瘍の診断あるいは外科的治療法・化学療法その他の報告・改善がなされ今日では決して不治の病とも言いきれなくなりつつあるが, 小児の腫瘍は例えば仙骨奇型腫が生後しばらくは良性の態度を示し急に悪性化するように発生原因発育形式・病理形態上も成人の腫瘍とは異なる点を有し, 治療法更には治療後経過にも異なる概念をもつことが要求されることは周知のとうりである.我々は最近3歳男児の心疾患患者に発生した悪性腫瘍を疑わせた極めて稀な乳腺腫瘍を経験したのでここに報告しあわせて簡単な考察を加えたい.