1993 年 29 巻 4 号 p. 845-848
小児の腹部鈍的外傷は患児の訴えが曖昧なためにその診断が難しいとされ,以前は試験開腹が行われることも多かった.しかし画像診断が進歩してきた近年,その手術適応はより厳格になってきていると思われる.膵外傷の場合,受傷直後は腹部所見に乏しくかつCT検査や超音波検査で膵の形態的変化がとらえられることは稀である.今回我々は,交通事故で腹部を打撲し腹痛を訴えて来院した3歳の男児に対し,全身麻酔下に試験的腹腔鏡を施行した.腹腔内に少量の腹水を認め,腹水中の Amylase 値を測定したところ,146,500IU/lと高値であったため膵外傷と診断し開腹手術を施行した.試験的腹腔鏡は開腹手術の適応の判断材料として意義深いものであり,小児に対しても全身麻酔下に安全に施行し得た.