日本小児外科学会雑誌
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非定型先天性横隔膜ヘルニア3症例の検討 : 極めて稀な多発性有嚢性横隔膜ヘルニア症例を中心に
窪田 昭男秦 信輔井村 賢治西川 正則森本 静夫中山 雅弘
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1993 年 29 巻 7 号 p. 1281-1286

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抄録
Bochdalek あるいは Morgagni ヘルニアとは異なった部位に発生する先天性横隔膜ヘルニアが存在する.部分的横隔膜挙上症と呼称されることもあるが,呼称は一定していない.われわれはこの型の先天性横隔膜ヘルニアを3例経験したが,内1例は報告例の極めて少ない多発例であった.本症を仮に非定型先天性横隔膜ヘルニアと呼び,症例報告し,併せて呼称について考察した.症例1は10ヵ月男児の直腸球部瘻を有する鎖肛症例である.根治術前に新生児期には明かでなかった左横隔膜の2ヵ所のヘルニアに気付き,1歳1ヵ月時経腹的に横隔膜修復術を行った.ヘルニアは左横隔膜の内側前方および脊椎左方にあり,それぞれ肝および脾臓を内容とした有嚢性ヘルニアであった.ヘルニア嚢は組織学的には少量の筋組織を認めた.症例2はヒルシュスプルング病を有する11ヵ月の男児である.根治術時に新生児期には認められなかった右横隔膜ヘルニアに気付いた.経胸的に横隔膜修復術を行った.ヘルニア内容は肝組織であり,ヘルニア嚢を欠如していた.症例3は敗血症治療中の日齢25の男児である.偶然胸部X線像により右横隔膜ヘルニアに気付いた.経腹的に横隔膜修復術を行った.多発横隔膜ヘルニアはこれまでに2例報告されているのみである.自験例および報告例より,呼称としては部分的横隔膜挙上症よりも横隔膜ヘルニアとした方が妥当であると考えられた.
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