1993 年 29 巻 7 号 p. 1317-1323
後腹膜原発腫瘍で後腹膜に広く浸潤傾向を示す場合,外科的完全切除は不可能な場合が多く生命予後は不良である.今回我々は3歳6ヵ月男児の後腹膜原発平滑筋肉腫を経験した.主訴は腹部膨満,初診時腹部全体が著明に膨満し呼吸状態も不良,画像上巨大腫瘍が後腹膜全体を占拠し,腹部大動脈と下大静脈が腫瘍の中央を貫通する像を呈していた.化学療法を行い全身状態が改善後,初診1年後に開腹術を施行した.開腹時腫瘍は腹部全体を占め大血管群は全く見えず,腫瘍切除に際しては腫瘍血栓の充満した下大静脈を全切除,腹部大動脈も腫瘍浸潤の認められる外膜を腫瘍側に付ける形で切除した.術後腫瘍床にβ線を照射を施行したが,1回目手術より3ヵ月後に下行結腸膜,6ヵ月後に回腸間膜,肝左葉,傍腸腰筋部の再発巣を切除した. VAC 療法を6クール施行,治療開始後2年1ヵ月を経た現在もなお厳重に経過観察中である.