日本小児外科学会雑誌
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ウルソデオキシコール酸経口負荷試験を用いた,胆道閉鎖症術後の胆汁酸代謝障害に関する検討
飯沼 泰史
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1994 年 30 巻 1 号 p. 76-84

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抄録
胆道閉鎖症 (以下本症) 術後症例に対し,ウルソデオキシコール酸 (以下 UDCA) 経口負荷試験を行ない,血清胆汁酸の変動から本症術後の胆汁酸代謝障害と利胆剤としての UDCA 投与について検討した. 対象は黄疸消失群12例,黄疸遷延群7例,コントロール群5例とした. 方法はウルソ5mg/kg を負荷し,負荷前と負荷後30,60,120,180分に採血し,高速液体クロマトグラフィーを用いて,血清胆汁酸15分画の測定を行ない,以下の結果を得た. 1) 黄疸消失群では,内因性胆汁酸の変化率 (負荷後180分値/負荷前値) は,血清総胆汁酸値の変化率と有意の相関を示し,また術後経過期間と内因性胆汁酸の変化率は,有意の相関を示した. 2) 黄疸消失群および黄疸遷延群では,Σ⊿ UDCA (胆汁酸吸収障害の指標) および Σ⊿ GUDCA (胆汁酸排泄障害の指標) は共にコントロール群より高値であった. Σ⊿ GUDCAは,黄疸遷延群が黄疸消失群に比し有意に高値であったが Σ⊿ UDCAは両群に差はなかった. 以上より以下の結論を得た. 1) 黄疸消失群でも長期経過症例では,内因性胆汁酸のクリアランス障害を伴っている可能性がある. 従って長期経過症例に対する UDCA 投与は肝に対して負荷となっている可能性があり,その投与は術後80ヵ月以内 (6歳以下) が望ましい. 2) UDCA 経口負荷試験における血清総胆汁酸値の変化率は,潜在的な胆汁酸代謝障害の有用な指標となり得ると考えられた. 3) 本症術後の肝細胞の胆汁酸排泄能は,黄疸の出現によりさらに障害されるが,胆汁酸吸収能は比較的保たれている可能性がある.
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© 1994 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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