1994 年 30 巻 1 号 p. 108-113
幼小児期の長期にわたり脾機能亢進症の治療を受け,また巨脾のために著しい運動制限を強いられていた16歳の Gaucher 病男児に対し約90% の脾部分切除術を施行した. 脾切除に際し,頭側2本の短胃動脈のみに支配された脾上極の一部と,脾門部に存在した2個の副脾を温存した. 脾切除面からの出血はアルゴンレーザーコアグレーター,oxycellulose 綿貼布および吸収性合成糸を用いた断端結節縫合で完全に止血出来た. 残存脾はその切離縫合線上に大網を縫着しこれをさらに胃大彎に縫着固定し,捻転を予防した. 術後9か月時の脾シンチグラムで温存した脾組織の存在を確認,術後2年の現在も骨病変の悪化を示唆する所見は認めず,患児の Quality of life は著しく向上した.