抄録
鈍的外傷後に発生した膵断裂症例を経験し,その保存的治療について検討した. 症例は9歳男児で,ブランコで腹部を打撲し膵体部損傷の疑いで当科を紹介された. 入院時画像診断にて膵体部断裂を強く疑ったが,腹部所見の限局化によって保存的治療を試みることとした. 経過観察中に膵仮性嚢胞が断裂部に形成され,28病日目に嚢胞の破裂のためドレナージ術を施行した. しかしながら,嚢胞の再発を認めたため,結果的にエコー下に経皮的外瘻術を行って治癒せしめた. 本症例の如く,膵仮性嚢胞か増大傾向にある場合は,まずエコー下に外瘻術を行うべきであると考えられた. また,主膵管損傷を伴う膵断裂を疑う症例においても,受傷後早期に腹膜炎症状が限局化し軽度の場合には,小児における臓器切除の将来的なデメリットを考えて,保存的療法も考慮されてよいと考えられた.