日本小児外科学会雑誌
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超音波カラードプラ法による小児の肝・脾血行動態に関する研究第I報 : 正常小児例の検討
大塚 恭寛
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1994 年 30 巻 7 号 p. 1267-1277

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抄録
小児領域における腹部臓器の血行動態解析の報告は少なく,今後その解析が要求されるものと考えられるが,その評価のためには対照となる正常値が必要である. そこで,超音波カラードプラ法 (CDUS) を用いて,小児の肝・脾血行動態指標の正常値を年齢階級別に検索した. 対象は,肝・胆道・脾・門脈系に異常所見を有さない正常小児106例で,これらを新生児・乳児・幼児・学童の4群に分類し,Aloka カラードプラ SSD-870を用いて,門脈・脾静脈・固有肝動脈・脾動脈の平均血流速度・血流量・体重当り血流量を測定し,群間で比較・検討した. その結果,1. 平均血流速度は,低圧循環系では年齢によらずほぼ一定であったが,高圧循環系では高年齢ほど有意に高値を示した. 2. 検索した全血管において,血流量は高年齢ほど有意に高値を示したが,体重当り血流量は低年齢ほど有意に高値を示した. 3. CDUS にて得られた体重当り総肝血流量の各年齢階級における正常値は,各年齢階級における体重当りに占める肝の重量比とほぼ一致しており,小児の成長に伴う肝重量比の減少を良く反映していた. 4. CDUS は,小児の解剖生理学的特性および機種の機械特性を考慮に入れた幾つかの工夫により,小児の肝・脾血行動態を解析する有用な手段となり得た. 以上より,今回の検索で得られた正常値は,小児の各種消化器疾患における肝・脾血行動態を解析する上での対照となり得るものと考えられる.
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© 1994 特定非営利活動法人 日本小児外科学会

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