1995 年 31 巻 2 号 p. 237-241
症例は日齢1の男児である. 在胎33週に胎児超音波検査にて消化管閉鎖を疑われ,在胎39週1日母体転送された. 39週6日経腔分娩にて出生. 生後1日目より血便と左鼠径部の発赤腫脹にて発症し,腹部単純レ線写真で,左上腹部に石灰化を伴う腫瘤陰影が認められた. 腹部超音波検査では左上腹部に充実性の部分と嚢胞性の部分が混在する腫瘤が描出され,これは胎児期に指摘された異常陰影に一致した. 左鼠径ヘルニア嵌頓と,後腹膜奇形腫あるいは meconium peritonitis の診断で開腹し,左鼠径ヘルニア修復術及び,胃壁を一部含めた腫瘤全摘術を行った. 組織学的には胃の粘膜下より壁外にかけて発育した奇形腫であった. 胃奇形腫は本邦では自験例を含め46例の報告があるに過ぎない. また出生前に腫瘍を超音波検査でとらえた例は我々の症例が第1例目である.